特許の日常

菅原国際特許事務所(愛知県名古屋市)の所員Xのブログです。

【判例】AI発明は特許を取得できない!?

愛知県名古屋市菅原国際特許事務所の所員Xです。

 

先日、AIにより生み出された発明に係る出願について、特許法に規定する「発明者」は自然人に限られるとの判断を示した判決がありました。この事件の概要は以下の通りです。

 

1.事件について

(1)事件

令和5年(行ウ)第5001号 出願却下処分取消請求事件

東京地方裁判所

原告:A

被告:国(特許庁長官)

 

(2)概要

 原告は、特願2020‐543051に係る国際出願(【発明の名称】 フードコンテナ並びに注意を喚起し誘引する装置及び方法)をした上、日本への国内移行手続として国内書面を提出した。国内書面における発明者の氏名として、「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」と記載した。

 特許庁は、原告に対し、発明者の氏名として自然人の氏名を記載するように補正を命じたが、原告は補正をしなかったため、本件出願を却下した(本件処分)。

 本件は、原告が、被告に対し、特許法にいう「発明」はAI発明を含むものであり、AI発明に係る出願では発明者の氏名は必要的記載事項ではないから、本件処分は違法である旨主張して、本件処分の取消しを求めた。

 

(3)裁判所の判断

 裁判所は、特許法に規定する「発明者」は自然人に限られるものと解すると判断して、原告の請求を棄却しました。

 以下、裁判所の判断を抜粋します。

『発明とは、自然人により生み出されるものと規定していると解するのが相当である。』

特許法184条の5第1項2号の規定にかかわらず、原告が発明者として「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」と記載して、発明者の氏名を記載しなかったことにつき、原処分庁が同条の5第2項3号に基づき補正を命じた上、同条の5第3項の規定に基づき本件処分をしたことは、適法であると認めるのが相当である。』

特許法66条は、特許権は設定の登録により発生する旨規定しているところ、同法29条1項は、発明をした者は、その発明について特許を受けることができる旨規定している。そうすると、AIは、法人格を有するものではないから、上記にいう「発明をした者」は、特許を受ける権利 の帰属主体にはなり得ないAIではなく、自然人をいうものと解するのが相当である。』

特許法に規定する「発明者」は、自然人に限られるものと解するのが相当である。』

 

2.所感

 裁判所の判断によれば、特許法に規定する「発明者」は自然人に限られ、書面には発明者の氏名を記載する必要があることから、現状では、AIがした発明について特許を取得できないことになります。

 ただし、判決書の最後には、「発明者」が自然人に限られる旨の判断について、『まずは我が国で立法論としてAI発明に関する検討を行って可及的速やかにその結論を得ることが、AI発明に関する産業政策上の重要性に鑑み、特に期待されているものである』と記載されているように、将来的にはAI発明について特許取得が可能になるかもしれません。

 なお、本件発明の内容は国際公開第2020/079499号公報に記載されています。全く異なる2つの発明(「 フードコンテナ」と「注意を喚起し誘引する装置及び方法」)が記載されています。図面も含まれており、予想よりもしっかりとした内容であると感じました。

 

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